變格活用(ヘン カク クヮツ ヨウ')

變格活用(ヘン カク クヮツ ヨウ')にはカ行變格活用(ギャウ' ヘン カク クヮツ ヨウ')とサ行變格活用(ギャウ' ヘン カク クヮツ ヨウ')があります。それぞれ、カ變(ヘン)、サ變(ヘン)といふ略稱(リャク ショウ')で呼(よ)ばれます。カ變(ヘン)は「來(く)る」一語(イチ ゴ)ですが、サ變(ヘン)は「する」とその複合動詞(フク ガフ ドウ' シ)が含(ふく)まれます。また、複合動詞(フク ガフ ドウ' シ)によつては「ずる」のやうに語尾(ゴ ビ)が濁(にご)る場合(ば あひ)もあります。

變格活用(ヘン カク クヮツ ヨウ')

行(ギャウ')	例(レイ)	未然(ミ ゼン)	連用(レン ヨウ')	終止(シュウ' シ)	連體(レン タイ)	假定(カ テイ')	命令(メイ' レイ')	音便一(オム ビン イチ)	音便二(オム ビン ニ)
カ	來(く)る	こ	き	くる	くる	くれ	こい
サ	する	せ	し	する	する	すれ	しろ	し	さ
ザ	信(シン)ずる	ぜ	じ	ずる	ずる	ずれ	じろ	じ

• サ變(ヘン)の音便形(オム ビン ケイ')は、例外的(レイ グヮイ テキ)に未然形(ミ ゼン ケイ')から派生(ハ セイ')します。嚴密(ゲム ミツ)には音便(オム ビン)とはいへないのですが、語源的(ゴ グヱン テキ)に、未然形(ミ ゼン ケイ')＋助動詞(ジョ ドウ' シ)から音韻變化(オム イン ヘン クヮ)によつて派生(ハ セイ')したので、便宜上(ベン ギ ジャウ')、音便形(オム ビン ケイ')に含(ふく)めます。變格活用(ヘン カク クヮツ ヨウ')の例外(レイ グヮイ)をすべて考慮(カウ リョ)することは、全體(ゼン タイ)の規則(キ ソク)に無用(ム ヨウ')な複雜(フク ザツ)さを持(も)ち込(こ)みますので、ここでは便宜的(ベン ギ テキ)な分類(ブン ルイ)をしました。

• 命令形(メイ' レイ' ケイ')には「〜よ」の形式(ケイ' シキ)もありますが、表(ヘウ)が煩雜(ハン ザツ)になるので、ここでは省略(シャウ' リャク)します。

• サ變(ヘン)の音便一形(オム ビン イチ ケイ')「し」は、「せむ」→「せん」→「せう」→「ショー」→「しよう」から派生(ハ セイ')しました。「ショー」といふ表記(ヘウ キ)は文獻的(ブン ケン テキ)には殘(のこ)つてゐませんが、助詞(ジョ シ)「ます」「です」と同樣(ドウ' ヤウ')の變化(ヘン クヮ)を經(へ)たと思(おも)はれます。また、「しない」にある「し」は例外的(レイ グヮイ テキ)に關東方言(クヮン トウ' ハウ' ゲン)で出現(シュツ ゲン)したものがそのまま標準化(ヘウ ジュン クヮ)したと思(おも)はれます。

• サ變(ヘン)の音便二形(オム ビン ニ ケイ')「さ」は、「せさせる」→「させる」、「せられる」→「される」のやうに「せさ」「せら」が短縮(タン シュク)することで派生(ハ セイ')しました。

• 濁音化(ダク オム クヮ)したサ變(ヘン)の音便二形(オム ビン ニ ケイ')「ざ」は、存在(ゾン ザイ)しません。「信(シン)ぜさせる」「信(シン)ぜられる」として運用(ウン ヨウ' )します。同樣(ドウ' ヤウ')に、語尾(ゴ ビ)の直前拍(チョク ゼン ハク)が促音(ソク オム)のときも、「達(タッ)せさせる」「達(タッ)せられる」として運用(ウン ヨウ' )します。