キーボードの入力效率

 確かに、使用頻度や配置などを加味して效率化を圖る試みはあるが、結局は、數値的限界點があるわけで、それを考察してみよう。實際、キーボード入力は、確定キーとシフトキーの組み合はせであり、確定キーの數が多いほど打鍵數は減るが、覺える配置數が増え、シフトキーが多いほど、配置數は減るが、打鍵數が増えるといふ關係にある。

 シフトキーといふと狹義には、キーボードの左右にあるシフトキーを聯想するし、親指シフトのキーボードなら、スペースの左右にあるキーを思ひ浮かべる。しかし、廣義に定義すれば、それは、「確定キー以外のキー」となる。例へば、ローマ字入力の場合、「TOUKYOU」と入力するとき、シフトキーは「T・K・Y」になり、確定キーは「O・U」になる。

 さういふ意味で、打鍵時間の違ひ「前置シフト」「後置シフト」「同時シフト」「状態變移シフト」や打鍵位置の違ひ「小指シフト」「親指シフト」「中指シフト」全てを捨象化してシフトキーと呼べる。

  • 「前置シフト」:例、ローマ字入力の子音の部分
  • 「後置シフト」:例、假名入力の濁點の部分
  • 「同時シフト」:通常のシフトキー
  • 「状態變移シフト」:例、CapsLock、NumLock

 さて、評價方法だが、さまざまなキーボードを考慮すると計算が面倒だ。基本は全て一緒なので、ここでは、英字キー26個で、かつ2打鍵以下の組み合はせを評價してみる。これは、通常のIMEでカスタマイズ可能な範圍でもある。まづ、26個すべてを確定キーに使ふと組み合はせ數は26個だ。次に25個を確定キーにして1個をシフトキーにすると、組み合はせは25個(シフト無し)と25個(シフト有り)で50個になる。同樣に、確定キーを「X」個とすれば、シフトキーは「26−X+1」個の關係になる。

シフトキー 確定キー 計算 組み合はせ
0 26 1*26 26
1 25 2*25 50
2 24 3*24 72
3 23 4*23 92
4 22 5*22 110
5 21 6*21 126
6 20 7*20 140
7 19 8*19 152
8 18 9*18 162
9 17 10*17 170
10 16 11*16 176
11 15 12*15 180
12 14 13*14 182
13 13 14*13 182
14 12 15*12 180
15 11 16*11 176
16 10 17*10 170
17 9 18* 9 162
18 8 19* 8 152
19 7 20* 7 140
20 6 21* 6 126
21 5 22* 5 110
22 4 23* 4 92
23 3 24* 3 72
24 2 25* 2 50
25 1 26* 1 26

 さて、假名入力の場合、拗音は複數の假名の組み合はせで表現する方法を取ると、清音(47字)、濁音・半濁音(25字)、撥音(1字)、小書き假名(10字)、長音符號(1字)の合計84字ほど必要になる。當然のことながら、シフト無しの場合だけでは、26個で84字の表現は不可能だ。最低でも、3個のシフトキーが必要になる。逆に、22個のシフトキーを確保し、4個の確定キーでも可能だ。實のところ、現在のローマ字假名變換では、21個のシフトキーと5個の確定キー「A・I・U・E・O」で表現する方法を取ってゐる。

 キーボード入力の效率を追及するのなら、一般的には打鍵數が少ないはうが良い。そのためにはシフトキーを減らし確定キーを増やすはうが良い。なぜなら、シフトキーを使用すると必ず確定キーが必要になるので、最低でも2打鍵以上になる。一方、確定キーの場合、理想的な環境では、1字1打鍵で濟む。

 ローマ字假名變換の場合、インド系文字のやうに、子音字にはデフォルトで母音のアが後置すると決めれば、入力效率が20%向上するだらう。ア段の音は、全體の40%を占めてをり、この部分が2打鍵から1打鍵になることで、20%打鍵數が減るといふ計算になる。殘念ならが、通常のIMEは、後置シフトには對應してをらず、前置シフトでカスタマイズすると、ローマ字入力のイメージから大幅にずれてしまふ。例へば、「SA・I・TA・MA(さいたま)」「I・BA・RA・GI(いばらぎ)」を前置シフトでア段の母音が省略できると考へると「S・I・T・M」「I・B・R・IG」となり、使ひ勝手が良いとは言へない。

 效率化はいろいろな入力方法で試みられてをり、各論には觸れないが、組み合はせの理論で行けば、シフトキーは3個から5個程度までにとどめ、確定キーを多く確保する方法が效率良い。親指シフトが、まさにこの條件に當てはまると言へば、議論もへったくれもなく、結論が出てしまふ。

 實は、JISX6004は理論的には正しかった。