後置シフトができない辛さ

 まづ、廢止されたJISX6004の規格書について、ブックマークで情報がきたので紹介しておく。

 情報の提供者も發信者も、非常に有り難い。ただ、かういふ政府發行の資料(廢止資料と言へども税金が使はれてゐる)が個人ベースでしか提供されない状況が好ましいのかどうかは議論がある。

 さて、キーボード・シリーズを豫想以上に引っ張ってしまったが、結論として、メジャーなIMEがローマ字假名入力で後置シフトに對應してゐないことが大きな制約だといふ印象を持った。例へば、ハングルのIMEは後置シフトだ。ハングルの構成要素は初聲、中聲、終聲と續くが、初聲、中聲と續いた場合、そこで假り確定をする。その次に有意な終聲が來れば、再度、文字を構築する。さうでなければ、確定をする。ちゃうど、「か」の後ろに「゛」がきた場合、「が」に再構築するし、他の假名がきたときは「か」で確定するのと、同じだ。

 ソフトウェアは基本的に前置シフトを好む。それは、事前に状態變移を知っておいたはうが例外事項が少なくなり、處理が簡潔になるからである。日本語の文字コードとして、シフトJIS、EUC−JP、7ビットJIS、UTF8などあるがすべて前置シフトた。

 ところが、人間の發想は後置シフトである。聯想できるグループをまづ提示して、これに細かい屬性を付けていく。文字は、まさにその發想で作られてゐる。假名文字では、濁點・半濁點が屬性になる。インド文字やアラビア文字もまづ子音を提示して、その子音に屬性符號を付けていく。さらに、文脈上、誤解を生じなければ、屬性符號は省略する。

 現在、MS−IMEがサポートしてゐる後置シフトは濁點・半濁點だけだ。しかも、埋め込みであり、新規の後置シフトを追加できない。一方、携帶電話は後置シフトだ。「た」を二回押せば「ち」になる。もう一回押せば「つ」になる。人間の發想としては、まづタ行といふグループを選び、それから、「たちつてと」を選擇する。必要ならば、濁點を付けるし、小書き假名にもする。

 携帶電話にさへ實裝されてゐる自然な入力方法がIMEで實現できない。この状況にもどかしさを感じてしまふ。