アメリカ領 冥王星

 ニューヨークにあるヘイデン・プラネタリウムの館長、タイソン博士による冥王星惑星降格決議にまつはるエピソード集。9章構成でそのうち科学的な記述は3章程度で、残りはタイソン博士に送られた多数の抗議メールと少数の激励メールの紹介である。実は、タイソン博士は、冥王星の惑星降格議論とは別個にプラネタリウムの展示を巡り、従来の太陽から距離でなく、ガス惑星(木星土星天王星海王星)、岩石惑星(水星、金星、地球、火星)などのグループ分けに基づいた展示を採用した。ところが、この分類では、冥王星の所属グループがなく、結果として冥王星を惑星から降格したと誤解され、タイソン博士は意図せず、冥王星降格論者の首謀者と見なされるやうになった。
 読後の感想であるが、アメリカ人の冥王星に対する思ひ入れを理解しないと、タイソン博士に送られたメールを読むのは苦痛かもしれない。実際、本書には50通以上紹介されてゐた。俗っぽい表現を使ふと2ちゃんの趣味板のやうだ。その趣味に関心がある人には譲れない議論でも、関心のない人にとっては、どうでもいいし、そんな平行線の議論を延々と読まされるのは苦痛以外何ものでもない。
 では、なぜアメリカ人は冥王星に思ひ入れが強いか?それは御存知の通り、冥王星の発見者がアメリカ人のトンボーだからだ。アメリカ人にとって冥王星はある意味でアメリカの植民地といふ認識かもしれない。
 ところで、私は小学生のころから宇宙に関心があったが、以前から冥王星はどう見ても小惑星か彗星だと思ってゐたので、今更、惑星から降格されても異論はないし、学問的に、やうやくすっきりした体系になって良かったと思ってゐる。むしろ、私は、太陽系惑星は、ガス惑星の四つに限定して、岩石惑星の四つと月は太陽の衛星と見なした方がすっきりするといふ過激な意見も持つ。どう見ても、太陽>>(越えられない壁)>>木星天王星>>(越えられない壁)>>地球>月>冥王星だ。
 さて、最新の分類では、太陽系の天体は次のやうに分けられる。