(2018/09/22)
先日9月16日に引退した安室奈美恵さんですが、「arigatou」といふ歌を歌ってゐいたんですね。引退時に初めて気づきました。
さて、「arigatou」のつづりを見て、ローマ字界隈の人は、99式*1を思ひつくでせうが、さすがに、作詞家は99式を意識したわけでなく、単純にワープロ式もしくは翻字式でつづっただけだと思ひます。
ところで、一昔前に「YOKOSO JAPAN」のキャンペーンがあったと思ひます。この「YOKOSO」はパスポート式です。「ヨ コ ソ」「ヨ コー ソ」「ヨ コ ソー」では文脈上不自然なので、「ヨー コ ソ」と読むのでせう。このことからも、本来表音文字であるローマ字なのに、読むのに逐一文脈依存の無駄な推理が必要になる時点でパスポート式は欠陥だらけといふ結論です。
一方、「arigatou」ですが、訓令式では「arigatô」とつづりますが、作詞家としては、大切な曲名が字上符が使へない環境で「arigato」と転記されるのを本能的に嫌ったのでせう。それに「arigatou」は「ア リ ガ ト ウ」と読まれるためにつけた曲名で、「ア リ ガ ト」や「ア リ ガ トー」と読まれては駄目なのです。「ア リ ガ ト」はカジュアルな表現ですし、「ア リ ガ トー」は事務的な印象を受けます。「ア リ ガ ト ウ」と一文字づつ丁寧に発音してこそ伝はる感謝の気持ちを意味してゐるのでせう。
仮名文字もローマ字も表音文字であることは同じです。仮名文字であれば区別できる微妙な発音差による表現を否定してまで、訓令式にある長音表記の原理原則に拘る必要があるのでせうか?後発規格が先発規格よりも表現力に劣ってゐては存在価値がありません。ワープロ式や翻字式から出発すれば、少なくとも仮名文字と同等の表現ができるはずで、その上で、工夫発展させていく方が前向きだと思ひます。