訓令式ローマ字、訓令定義、訓令第1表、訓令第2表

(2018/09/22)

 いはゆる訓令式ローマ字とは、1937年に告示されたローマ字表*1であり、1954年に告示されたローマ字の第1表*2のことを指します。ところが、現在、訓令として有効なのは1954年版であり、1937年版は廃止されてゐます。だから、1937年版だけを訓令式ローマ字と言ひ張り、1954年版の第2表は訓令式ローマ字ではないといふのは用語として非常に誤解を招きます。
 例へば、常用漢字表には1981年版と2010年版があります。訓令として効力があるのは2010年版です。それを1981年版こそ常用漢字であり、2010年版に追加されたものは常用漢字外であると言ったら、奇妙に感じるでせう。その奇妙な言ひ回しがローマ字の世界では行はれてゐます。
 ローマ字に関心のない層にとっては、訓令式は「si ti tu hu zi」でヘボン式は「shi chi tsu fu ji」といふ区別を示すための用語でいいのですが、ローマ字に関心を持つ人が、1954年の訓令を読めば読むほど、訓令式ローマ字といふ用語を無条件に使ふのは躊躇するはずです。逆に、ローマ字に詳しいのに、無条件に訓令式ローマ字を連呼する人は、内心で1954年の訓令を否定してをり、第2表は訓令外であるかのやうに誘導してゐる印象を受けます。
 ただ、「訓令式ローマ字」といふ用語は動かしがたいので、これは塩漬けにして、今後は、次のやうに使ひ分けようと思ってゐます。

  • 訓令定義: 1954年の訓令で定義されたもの全般
  • 訓令第1表: 1954年の訓令定義で第1表
  • 訓令第2表: 1954年の訓令定義で第2表
  • 訓令式ローマ字: 1937年の訓令定義、1954年の訓令第1表