日本固有文明の謎はユダヤで解ける → ISBN:4198618879
タイトルから分かるやうに いはゆる日ユ同祖論の本である。普段はこの手の本は讀まないのだが、たまたま、圖書館の新刊コーナーにあつたので借りて讀んでみた。日ユ同祖論については、インターネットでも專用のホームページがあり、知識としては知つてゐたので、新たなる情報はなし。
私は、比較言語學方面は少し かじつたことがあるので、この手の本が日本語と古代ヘブル語との類似性を説得の材料に使ふ部分を讀むにつれて脱力感に とらはれてしまふ。とくに神道とユダヤ教の類似性の部分には注目してゐるので、日ユ同祖研究者が專門外の分野である言語面に深入りするのは やめて欲しいと思ふ。
さて、神道とユダヤ教の類似性なんて、トンデモ系に走つてゐるやうに感じられるが、宗?といふ分野に限つていへば、そんなにトンデモではなく、新興宗教が既存宗教の教義を取り入れることはよくあることで、神道が、ユダヤ教の流れをくんだ古代宗教を教義に取りいれたと考へるのは別に不思議ではない。さういふのだけに注力した學問が欲しいものだ。一方、天皇の祖先がユダヤの１０支族だつたとかいふのは さすがにト印だらう。
ユダヤ教とキリスト教とイスラム?は、歴史的に宗教觀で紛爭をよく起こしてゐるが、彼等が、同じ神を信じ、多くの教義を共有してゐるのは有名である。これも創始者が正直に既存宗教の發展形であると記録を殘したからいへることであつて、もし創始者がその事實を隱蔽してゐたら、現在の状況からみて、異教徒の神は惡魔の一種だと見なしてゐただらう。さういふ意味で、神道の神と、ユダヤ教の神が同じ神であつても全然 不思議ではない。もちろん、日本人がユダヤ教徒のやうに唯一絶對神を信じるわけでなく、神道で日本化された神を信じるといふ意味で同一神を信じることになる。
