字音假名遣ひと中立進化説

中立進化説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AA%AC

突然變異には、3種類あつて、それは「生存に有利」「生存に不利」「どうでもいい」である。突然變異とは分子レベルで遺傳子の損傷である。損傷する確率は單純にその遺傳子の長さに比例する。たまたま、損傷した遺傳子がとてつもなく生存に有利な場合にそれは進化として現れる。しかし、確率的に言へば、それはゼロに近い。本當の進化とは「どうでもいい」中立な部分から始まる。

まづ、「生存に不利」なものは、言ふまでもなく、子孫を殘せずに淘汰される。次に「生存に有利」なものは子孫を殘せるかと言へば、そんなに單純なものではない。現代社會において、智能が高い方が生存に有利であるが、だからと言つて、オーバードクターがモテモテとか言へば、さうでもない。貧乏で所帶を持てなかつたり、研究しすぎて氣が振れたり體を壞したりすれば、そこで終はりだ。(話が逸れたが、どんなに優れた個體でも夭逝してしまへば、子孫は殘せない。夭逝の確率が、遺傳子が少し改善されたぐらゐで劇的に下がる譯ではない。)

ところが、「どうでもいい」變化といふものが曲者である。例へば、腦容量の増大は、顎の筋肉が退化することから始まつた。猿の場合、頭の天邊から強力な顎の筋肉が吊るされてゐる。これで何かと硬いものが食べられたりして有利なのだが、なぜか、一部の猿は、遺傳子が壞れて、頭の天邊から強力な筋肉がなくなつた。これがライオンなら生存に不利だつたかも知れないが、當時の類人猿は、硬いものなら道具で碎けるので、生存に不利にならなかつた。最初は筋肉が退化した出來損なひだつたのだが、頭を押さへるツッカエ紐がなくなつて、頭デッカチになり、何と出來損なひの方が腦容量が増大して生存競爭で勝ち殘つてしまつた。

で、本題の字音假名遣ひであるが、現代假名遣ひになつて、字音が教養のバロメーターから外されてしまひ、どうでも良いといふ風潮になつたので、自由な研究が進んだと思ふ。「クヰ」「スイ」「シム」などは戰後になつて漢字辭典で採用された。これも中立進化説の一つかなと苦しい言ひ譯をする。

ただ、進化=優秀とは言へない事情もある。皮肉にも「一番進化した眼を持つ魚は盲目の深海魚」ださうだ。眼が生存競爭において致命的な要因でないからこそ深海では進化の自由度が高い。一部の深海魚は優れた巨大な眼を獲得したが、大半の深海魚が盲目になつた。

※眼が語る生物の進化(ISBN:4000065378)