互換漢字と正規等價

 いよいよ佳境といふところか?

 これが正字と略字にどう關係するか表にしてみよう。表から分かるやうに、ユニコードが採用した正規化により、互換漢字の部分は統合漢字に置き換へられるので、例へば、人名で兩者を區別してゐる場合は、深刻な認證エラーを起こす危險性がある。

統合漢字 互換漢字 正規化
中國 正字 正字
臺灣 正字 正字 正字
日本 略字 正字 略字
韓國 正字 正字 正字
正字派の提案 正字 (略字) 正字

 中國と臺灣は基本的に互換漢字を用ゐない。臺灣は、Big5のエラーで2文字ほど互換漢字があるが、これは純然たる重複登録で、使はなくても濟む符号値である。日本の場合、統合漢字が略字で、互換漢字が正字になってゐる場合が多い。80個程度ある。困ったことに人名用漢字は兩者を區別してゐる。
 韓國では雙方とも正字を使ふが、互換漢字には讀み方の異なる漢字が登録されてゐる。韓國の文字コードでは、讀み方の異なる漢字に別の符號値を與へてゐるので、このやうな現象が起きる。理由は同じ漢字でも讀み方の異なる姓が存在してゐるから、それを區別するためだ。韓國は韓國で正規化により日本以上に深刻な問題が生じるのだが、もう漢字を使はないのかあまり騷いでゐない。少なくとも、この區別は字形とは關係ないので事情は異なる。
 正字派から見れば、現状の「統合漢字=略字、互換漢字=正字」の關係を逆轉させ、「統合漢字=正字、互換漢字=略字」のやうに臺灣・韓國と同じにすれば解決する、だから、この問題の深刻度は低い。もともと略字は手書きのときに存在するものであり、正規の字形ではないのだから、なくても困らない。使ひたい人は互換漢字で使へばよろしいといふ立場だ。
 一時期、互換漢字を使って正字を表示する方法もネットでは試されたがフォントの問題や變換の問題でトラブルを良く起こした。今でも携帶からの閲覽で不具合が出る。冷靜に考へると、正字が互換領域にあるのが間違ひの根本であり、私はそちら方面の非生産的な試みは止めた。「毎社」などは、略字が正字の領域を不法に占據してをり、たまたまフォントに間違った字形が登録されてゐるに過ぎない。

 ところで、イワマンさんのところだが、

だから、今後、私が作り直す際は、IVS方式でスッキリさせたいと思ふ。現状では、對應フォントも對應アプリケーションも少いが、世の中もかういふ方向で進むといいな、と思つた。

 多分、これが正解だと思ふ。ところで、殘念ながら異體字セレクタは32ビットの容量を消費してしまふ。本來なら規格委員がもっと早く異體字セレクタに方針轉換すべきであった。さうすれば16ビットの容量消費で濟んだかもしれない。