特集「ローマ字の分かち書き」: 実例7

(2019/05/18)

  • 特集「ローマ字の分かち書き」
  • 夏目漱石 坊っちゃん
  • 分かち書き
    • (1) 文頭に置ける言葉は空白を前に置き、文末に置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (2) 「です」を後ろに置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (3) 「それ」を前に置ける助詞は空白を前に置く
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分ける
    • (3) 助動詞「ます」はつづりが長くなるのでハイフンを前に置く

痛かったから勘太郎を垣根へ押しつけておいて、足搦をかけて向うへ倒してやった。山城屋の地面は菜園より六尺がた低い。勘太郎は四つ目垣を半分崩して、自分の領分へ真逆様に落ちて、ぐうと云った。勘太郎が落ちるときに、おれの袷の片袖がもげて、急に手が自由になった。その晩母が山城屋に詫びに行ったついでに袷の片袖も取り返して来た。

 (1) の「文頭」を当てはます。

痛かったから/勘太郎を/垣根へ/押しつけて/おいて、足搦を/かけて/向うへ/倒して/やった。山城屋の/地面は/菜園より/六尺がた/低い。勘太郎は/四つ目垣を/半分/崩して、自分の/領分へ/真逆様に/落ちて、ぐうと/云った。勘太郎が/落ちる/ときに、おれの/袷の/片袖が/もげて、急に/手が/自由に/なった。その/晩/母が/山城屋に/詫びに/行った/ついでに/袷の/片袖も/取り返して/来た。

 (1) の「文末」を当てはめます。

痛かった/から/勘太郎を/垣根へ/押しつけて/おいて、足搦を/かけて/向うへ/倒して/やった。山城屋の/地面は/菜園より/六尺がた/低い。勘太郎は/四つ目垣を/半分/崩して、自分の/領分へ/真逆様に/落ちて、ぐうと/云った。勘太郎が/落ちる/ときに、おれの/袷の/片袖が/もげて、急に/手が/自由に/なった。その/晩/母が/山城屋に/詫びに/行った/ついでに/袷の/片袖も/取り返して/来た。

 (2) の「です」を当てはめます。

痛かった/から/勘太郎/を/垣根/へ/押しつけて/おいて、足搦/を/かけて/向う/へ/倒して/やった。山城屋/の/地面/は/菜園/より/六尺がた/低い。勘太郎/は/四つ目垣/を/半分/崩して、自分/の/領分/へ/真逆様/に/落ちて、ぐうと/云った。勘太郎/が/落ちる/とき/に、おれ/の/袷/の/片袖/が/もげて、急/に/手/が/自由/に/なった。その/晩/母/が/山城屋/に/詫び/に/行った/ついで/に/袷/の/片袖/も/取り返して/来た。

(3) を当てはめると、「ぐうと」の「と」は、「(それ)と」と言へるので、切り離します。

痛かった/から/勘太郎/を/垣根/へ/押しつけて/おいて、足搦/を/かけて/向う/へ/倒して/やった。山城屋/の/地面/は/菜園/より/六尺がた/低い。勘太郎/は/四つ目垣/を/半分/崩して、自分/の/領分/へ/真逆様/に/落ちて、ぐう/と/云った。勘太郎/が/落ちる/とき/に、おれ/の/袷/の/片袖/が/もげて、急/に/手/が/自由/に/なった。その/晩/母/が/山城屋/に/詫び/に/行った/ついで/に/袷/の/片袖/も/取り返して/来た。

 ハイフンを付けるとすれば、「山城-屋」「六尺-がた」「四つ目-垣」「真-逆様」が当てはまります。
 ローマ字文では次のやうになります。

  • Itakatta kara Kantarou wo kakine e oshitsukete oite, ashigara wo kakete mukou e taoshite yatta. Yamashiro-ya no Jimen wa Saien yori Rokushaku-gata hikui. Kantarou wa yotsume-gaki wo Hanbun kuzushite, Jibun no Ryoubun e maq-sakasama ni ochite, guu to itta. Kantarou ga ochiru toki ni, ore no awase no katasode ga mogete, Kyuu ni te ga Jiyuu ni natta. Sono Ban haha ga Yamashiro-ya ni wabi ni itta tsuide ni awase no katasode mo torikaeshite kita.