(2019/09/29)
まづ、小書き仮名は正式には捨て仮名と言ひますが、捨て仮名の「捨て」からは不要といふ印象を受けてしまひます。ところが、捨て仮名は、これを省くと全く異なる音韻になりますので、不要どころか、不可欠な仮名です。このブログでは、各記事で初出のときは、「小書き仮名(捨て仮名)」と紹介しますが、二度目からは小書き仮名で統一してゐます。
さて、外来語*1に使はれる特殊音にはヘボン式系のローマ字で「fye」や「tye」と書き表せるものがあります。日本語母語話者にとって、容易に聞き分けられ、容易に話し分けられるのですが、これらは、単一の小書き仮名で表記できません。例へば、「fye」を「フェ」と書くと、「fe」と区別が付かなくなりますし、「tye」を「テェ」と書くと、「テ」の長音と認識される恐れがあります。そのときに二連小書き仮名を使用して、「フィェ」や「ティェ」と書き表します。
NQ式ローマ字*2にもローマ字で表現できるのに、単一の小書き仮名で表現できないものがあります。下記の表で該当部分を紹介します。
ャ | ュ | ェ | ョ | ァ | ィ | ェ | ォ | ィ | ゥ | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヴ | vya | vyu | vyo | ヴ | va | vi | ve | vo | ||||
シ | sha | shu | she | sho | ス | swa | swe | swo | ス | si | ||
ジ | ja | ju | je | jo | ズ | zwa | zwe | zwo | ズ | zi | ||
テ | tya | tyu | tyo | ト | twa | twi | twe | ト | tu | |||
デ | dya | dyu | dyo | ド | dwa | dwi | dwe | ド | du | |||
ヒ | hya | hyu | hye | hyo | ホ | hwa | hwi | hwe | ホ | hu | ||
フ | fya | fyu | fyo | フ | fa | fi | fe | fo |
上記の表で、左側が開拗音系の拡張、中側が合拗音系の拡張、右側は特別定義です。空欄のうちのいくつかはローマ字を定義した場合、仮名側で小書き仮名を複数並べて表記する必要があります。
- vye(ヴィェ), tye(ティェ), dye(ディェ), fye(フィェ)
- swi(スゥィ), zwi(ズゥィ)
- two(トゥォ), dwo(ドゥォ), hwo(ホゥォ)
一方、二連小書き仮名は読み方が不明の場合は、小書き化記号の「`」を使って、翻字式で書き表すこともできます。
- 例: ヴィェ → vu`i`e → vùìe (= vye)
参考までにローマ字ブログ『ヱピモセズ』の音節表も参照してください。