特集「訓令議事録」: 「おほむね」の意図するところ

(2019/03/31)

 そへがきに「おほむね」といふ表現がありますが、これも議事録をみると、主に何を意図してゐたか分かります。

 そえがきは第1表・第2表に共通するものであるが,書き表し方の細目を定めたものである。どうしてもこの各項にもれるものがあるので,「おおむね」ということばを入れたわけである。

 漏れがあるのは認識してゐるが具体的には訓令に明文化しないといふことです。明文化しないといふよりも明文化できないことなのでせうか?

 はねる音の「すべて」はなくてもいいということだが,標準式で,b,m,pのまえでは「ン」にmを書く習慣があるので,これをnにするという意味で「すべて」を入れた。しかし標準式の人がそれでもmを書くという場合のために,「おおむね」を入れたのである。

 これは、かなり踏み込んだ発言だと思ひます。「mb, mm, mp」のつづりを意図して「おほむね」と入れたと明言してゐます。
 一般には、この「おほむね」は「tch」を意図してゐると言はれてゐました。原則だと「cch」なのですが、そもそも訓令第一表に「ch」で始まるつづりは定義されてゐないので、訓令第一表だけを使用する場合は、「cch」が使はれる可能性がない訳です。だから、訓令第二表の「ch」をあへて使ふ場合は「tch」にしても訓令第一表に迷惑は掛けません。
 一方、「mb, mm, mp」は訓令第一表の「nb, nm, np」と真っ向から矛盾する訳で、さすがに明文化できなかったのでせう。