国語課題小委員会(第54回)(令和4年10月21日) - 配布資料 - 1

(2022-11-26) (正カナ)

 『「国語に関する世論調査」におけるローマ字表記についての調査結果』について、撥音の後ろに母音がきたときの調査結果が載ってゐた。

  • 田園(でんえん)
    • 64.9% Denen
    • 18.2% Den-en
    • 11.8% Dennen
    • 3.6% Den'en

 訓令定義で正しい「Den'en」が 3.6% しか使はれてゐない。「Den-en」は許容範囲と言へるが、それでも 18.2%。もっとも2位であることは救ひかもしれない。1位は「Denen」。「でねん」とどうやって区別を付けるのだらう。ただ、「'」や「-」を挟むのを忘れたと思へば、「おおさか」を「Ōsaka」でなく「Osaka」と書くのと同様の扱ひかもしれない。実際、パスポートの申請では、「しんいち」は「Shinichi」であり、文脈から「しにち」とは読まれないから長音符の付け忘れよりは害は少ない。
 そして、「Dennen」が 11.8% もあるのは由々しきことである。ローマ字仮名変換の「nn(ん)」がもたらした弊害である。では「でんねん」はどうつづるのか聞いてほしかった。多分、さう言ふ人は「Dennnen」と答へるのだらう。

国語課題小委員会(第54回)(令和4年10月21日)

(2022-11-26) (正カナ)

 『ローマ字のつづり方について:言語学の観点から (ペート・バックハウス氏提供)』に興味深い資料があった。

  • 神戸(こうべ)
    • 55.2% Kōbe
    • 18.9% Koube
    • 13.6% Kôbe
    • 7.5% Kobe
    • 2.3% Kohbe
    • 1.5% Koobe
  • 大阪(おおさか)
    • 54.9% Ōsaka
    • 21.0% Osaka
    • 11.6% Oosaka
    • 7.7% Ôsaka
    • 3.8% Ohsaka

 「ô」よりも「ō」の方が一般的だし、長音符が使えない環境では、仮名遣ひどほりにつづりたくなるものだ。

国語課題小委員会(第53回)(令和4年9月9日)

(2022-11-26) (正カナ)

 この回は、新日本式ローマ字の紹介がメイン。新日本式は学術的に使ふ分には、悪いとは思はないが、標準で取り上げる価値があるとは思へない。行段の規則性を求める人は日本式だし、表音性を求める人はヘボン式だ。新日本式は、その狭間でどちら付かずの状態だ。
 実用面でローマ字の問題は、長音符の廃止と単独の促音。ヘボン式(英語式)信仰の強い日本において、英語にない「ô」は異端のものだ。苦労してまで使ふ人は少ない。「o」と略されるか、「ou」と仮名遣ひどほりにつづるかのどちらか。「oh」でもかまないが、それなら詳細に矛盾のない規則を定めるべき。
 単独の促音は、教育上普通に必要。「一回(ikkai)」「一杯(ippai)」「一歳(issai)」「一体(ittai)」を「一(ik, ip, is, it)」と別々に扱ふのは混乱を招く。「一(iq)」でまとめて表すべき。

ローマ字仮名変換の設計 - 「nn(ん)」の弊害

(2022-11-25) (現カナ)

 「nn(ん)」の定義は訓令違反であり、取り除くべき理由を上げます。

漢字 是認 全員 善人
平仮名 ぜにん ぜんいん ぜんにん
訓令定義 zenin zen'in zennin
nn(ん) zeninn zenninn zennninn
n'(ん) zenin' zen'in' zen'nin'
nq(ん) zeninq zenqinq zenninq

「nn(ん)」の場合

  • ぜにん → zeninn → ぜにんん
  • ぜんいん → zenninn → ぜんにんん
  • ぜんにん → zennninn → ぜんんにんん

 このように、「nn(ん)」の変換では、ローマ字つづりを見ると、全く訓令と異なる読みになり、訓令定義の読みを壊しています。

「n'(ん)」の場合

  • ぜにん → zenin' → ぜにん
  • ぜんいん → zen'in' → ぜんいん
  • ぜんにん → zen'nin' → ぜんにん

 IME は通常「'」を変換テーブルに含めていませんが、「n'(ん)」だけは特別処理として作り込まれています。実際、私もデフォルトの変換テーブルの場合、極力「n'(ん)」を使っています。残念ながら、「nn(ん)」が残っていると、「んに」を表すには、「nni」でなく、「n'ni」にする必要があります。

「nq(ん)」の場合

  • ぜにん → zeninq → ぜにんq
  • ぜんいん → zenqinq → ぜんqいんq
  • ぜんにん → zenninq → ぜんにんq

 訓令定義では「q」を使わないので、「q」が節々に現れますが、黙字と見なすことで訓令定義通りの読みになります。「nn(ん)」のように、後続のつづりにまで異なる読みが影響を及ぼすことはありません。また、「nn(ん)」を取り除いた後だと、「nni」で訓令定義通りに「んに」を表せます。

ローマ字仮名変換の設計 - 定義の登録

(2022-11-25) (現カナ)

 上記のローマ字仮名変換を使うために、どのような変更が必要かここで示します。

必須変更

  • 削除
    • nn(ん)
  • 追加
    • nq(ん), q(っ)

選択変更

  • 削除
    • gwa(ぐぁ), kwa(くぁ), we(うぇ), wi(うぃ)
  • 追加
    • gwa(ぐゎ), kwa(くゎ), we(ゑ), wi(ゐ)
    • dja(ぢゃ), dji(ぢ), djo(ぢょ), dju(ぢゅ), dzu(づ)
    • tcha(っちゃ), tchi(っち), tcho(っちょ), tchu(っちゅ)

解説

 「必須変更」は「nn(ん)」を消して、「nq(ん), q(っ)」を加えるだけです。「nn(ん)」は、入力が便利であっても、訓令違反のローマ字つづりを多数作り出すので、弊害のほうが多い定義です。弊害の詳細は別の記事で改めて述べます。代わりに撥音を単独で入れるものとして「nq(ん)」、促音を単独で入れるものとして「q(っ)」を定めます。なお、「hq(ー)」は、現在の IME では変換テーブルを置き換えるだけで表せないので、ここでは取り上げません。
 「選択変更」は必要があれば使います。本来、訓令定義では「gwa(ぐぁ), kwa(くぁ)」でなく、「gwa(ぐゎ), kwa(くゎ)」が正しい定義です。また、ワ行の直音を表すためには「we(うぇ), wi(うぃ)」でなく、「we(ゑ), wi(ゐ)」のほうが自然でしょう。ただし、これらは歴史的仮名遣いを使わない人には特に不要です。次に、「dya(ぢゃ), di(ぢ), dyo(ぢょ), dyu(ぢゅ), du(づ)」に抵抗がある人は、「dja(ぢゃ), ぢ(dji), djo(ぢょ), dju(ぢゅ), dzu(づ)」を加え、「tch」の「t」を促音として扱いたい人は「tcha(っちゃ), tchi(っち), tcho(っちょ), tchu(っちゅ)」を加えます。