口語文法つて必要か?

実は、正仮名遣ひでは、口語文法を特別に構築する必要がない。修正文語文法で十分だ。

  • 四段活用、連用形に音便の記述を追加。
  • 上一段活用、修正なし。
  • 下一段活用、修正なし。ただし所属動詞はなし。
  • 上二段活用、連体形と已然形に口語活用を追加。
  • 下二段活用、連体形と已然形に口語活用を追加。
  • カ行変格活用、修正なし。
  • サ行変格活用、修正が必要だが、助動詞として位置づける。
  • ナ行変格活用、標準語では所属動詞が移動したが方言は依然として使用。
  • ラ行変格活用、連体止めが主流になり終止形を使はないだけ。
  • 形容詞活用、連用形、連体形に音便の記述を追加。
  • カリ活用、タリ活用、ナリ活用、使はない活用形もあるが体系は維持。
  • デアリ活用、助動詞として位置づける。

大幅な修正が必要なのは、サ変とデアリ活用だが、これらは助動詞と見なせばよいだらう。だから自立語の活用は文語文法の体系をそのまま流用できる。用言の活用形でさへ、この程度の修正で済むのだから、他の部分はほとんど変更する必要がない。必要なのは文法といふ分類の変更でなく所属単語といふ中身の入れ替へだ。

語幹 未然 連用 終止 連体 已然 命令
四段 付く き/い (く)
貸す (す)
勝つ ち/つ (つ)
買ふ ひ/つ/(う) (ふ)
呼ぶ び/ん (ぶ)
上一 着る (きる) きる きれ きよ/きろ
上二 尽きる (く) きる/(くる) きれ/(くれ) きよ/きろ
下ニ 付ける (く) ける/(くる) けれ/(くれ) けよ/けろ
カ変 来る (く) くる くれ こよ/こい
サ変 する せ/さ/し (す) する すれ せよ/しろ
ラ変 有る り/つ (り)
形容 良い (く) く/(う) (し) い/(き) けれ
カリ 〜かり から かつ/(かり) (かる) (かれ)
タリ 〜たり (たら) と/(たり) (たり) たる (たれ) (たれ)
ナリ 〜なり なら に/(なり) (なり) な/(なる) (なれ) (なれ)
〜だ だら で/だつ

※口語では、連体止めで終止形を代替する。括弧内は特殊な文脈で使ふ活用形で、慣用句で使はれることもある。

  • 有りうる(有りえる)
  • 良し(良い)
  • 美しき森(美しい森)
  • 静かなる湖(静かな湖)