新常用漢字表 - 字体論争

 やはり、紛糾してゐるやうだ。私はこの件に関しては中立である。といふのは、常用漢字表の字体もJIS漢字コードの字体もどちらも支持しないから、どうでも良かったりする。JIS漢字コードが過去において行った字体改竄の歴史を知ってゐれば、新常用漢字表の字体統一派だって十分筋が通ってゐる。結局、自分達の世代が、過去を無視して字体を勝手に改竄できるといふ思い込みがある点ではどちらも五十歩百歩だったりする。個人的には、字体表には全く期待してゐない。音訓表の審議に期待してゐる。
 審議を期待と言っても、大幅に採用されることはないだらうが、多くの人が延べ数で1000件以上も提案したことは大きな意味を持つ。それだけで資料価値がある。日本語の文章にとって、漢字は音訓を具へて自立語に使用されることで、重層的な意味合ひを与へてくれる存在だ。
 JIS漢字コードの字体は確かに気に入らないものもあるが、JIS漢字コードのお陰で、インターネットで情報交換ができ、正字正仮名遣ひで書いたブログを公開できる。字体は、個人で変更できないが、使用漢字の選択や仮名遣ひはJIS文字コードの範囲内で工夫できる。その意味では、新常用漢字表とは関係なく、音訓の使用は個人の裁量で幾らでも工夫できるものである。新常用漢字表の公開レビューでも多くの方が音訓に関心を示したことは今後の日本語にとって良い材料を提供してくれる。