ユニコード勢力の策略

「𠮟」ではなく「叱」を常用漢字にしてほしい、あるいは、「𠮟」の「許容字体」として「叱」を認めてほしい、と陳情するのだ。

 安岡先生の意見ではなく安岡先生が引用した文章だが、文面どほり受け取ると文字コードに疎い投稿者の素朴な訴へに見えるが、意外と裏がありさうだ。実はシフトJISで表現できないのは「叱」だけではない。「頬」や「填」などの正式な字体もシフトJISでは表現できない。もちろん、Shift-JISX0213 を使へば何とかなるのだらうが、この符号化をサポートしてゐるソフトは少ない。少なくとも公的機関で使はれるやうな信頼性のあるソフトには皆無だらう。それに携帯の絵文字がシフトJISの空領域を勝手に占有して携帯ユーザーがそれに満足してゐる現状から見て、Shift-JISX0213が普及することは将来的にもありえないだらう。
 ところが、「頬」や「填」などを問題にせず、「叱」だけを問題にしてゐるのは、ユニコード対応ソフトの虚構を暴かれたくないからだ。ユニコードの内部コードは主にUCS2とUTF16の二つの符号化が使はれる。最新のユニコードはUTF16対応が必須だ。しかし、16ビット固定長のUCS2に比べて、16ビット・32ビット可変長のUTF16は実装が非常に面倒だ。OSなどは辛うじてUTF16に対応してゐるが、一般アプリではUCS2のままなものが多い。改定常用漢字表では、「叱」だけが、UCS2で表現できないのだ。従って「叱」問題で多くのソフトが障害を起こす可能性は非常に高い。だから、この投稿を穿った見方で読むと、シフトJIS対応といふ表の理由をつけた、ユニコード勢力の策略とも読める。この投稿者に知恵を付けたのは、シフトJIS側でなく、ユニコード側だ。