特集「ローマ字の分かち書き」: 実例4

(2019/05/18)

  • 特集「ローマ字の分かち書き」
  • 夏目漱石 坊っちゃん
  • 分かち書き
    • (1) 文頭に置ける言葉は空白を前に置き、文末に置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (2) 「です」を後ろに置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (3) 「それ」を前に置ける助詞は空白を前に置く
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分ける
    • (3) 助動詞「ます」はつづりが長くなるのでハイフンを前に置く

親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して、友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。

 (1) の「文頭」を当てはます。

親類の/ものから/西洋製の/ナイフを/貰って/奇麗な/刃を/日に/翳して、友達に/見せて/いたら、一人が/光る/事は/光るが/切れそうも/ないと/云った。切れぬ/事が/あるか、何でも/切って/みせると/受け合った。そんなら/君の/指を/切って/みろと/注文したから、何だ/指ぐらい/この/通りだと/右の/手の/親指の/甲を/はすに/切り込んだ。幸/ナイフが/小さいのと、親指の/骨が/堅かったので、今だに/親指は/手に/付いて/いる。しかし/創痕は/死ぬまで/消えぬ。

 (1) の「文末」を当てはめます。

親類の/ものから/西洋製の/ナイフを/貰って/奇麗な/刃を/日に/翳して、友達に/見せて/いたら、一人が/光る/事は/光る/が/切れそうも/ない/と/云った。切れぬ/事が/ある/か、何でも/切って/みせる/と/受け合った。そんなら/君の/指を/切って/みろ/と/注文した/から、何だ/指ぐらい/この/通りだ/と/右の/手の/親指の/甲を/はすに/切り込んだ。幸/ナイフが/小さい/のと、親指の/骨が/堅かった/ので、今だに/親指は/手に/付いて/いる。しかし/創痕は/死ぬ/まで/消えぬ。

 (2) の「です」を当てはめます。「そんなら」は「それなら」の撥音便と見なし、「そん(です)」が当てはまります。

親類/の/もの/から/西洋製/の/ナイフ/を/貰って/奇麗/な/刃/を/日/に/翳して、友達/に/見せて/いたら、一人/が/光る/事/は/光る/が/切れそう/も/ない/と/云った。切れぬ/事が/ある/か、何/でも/切って/みせる/と/受け合った。そん/なら/君/の/指/を/切って/みろ/と/注文/した/から、何/だ/指/ぐらい/この/通り/だ/と/右/の/手/の/親指/の/甲/を/はすに/切り込んだ。幸/ナイフ/が/小さい/の/と、親指/の/骨/が/堅かった/の/で、今だに/親指/は/手/に/付いて/いる。しかし/創痕/は/死ぬ/まで/消えぬ。

 (3) を当てはめると、「はすに」と「今だに」の「に」は、「(それ)に」と言へるので、切り離します。「何でも」の「も」も同様です。

親類/の/もの/から/西洋製/の/ナイフ/を/貰って/奇麗/な/刃/を/日/に/翳して、友達/に/見せて/いたら、一人/が/光る/事/は/光る/が/切れそう/も/ない/と/云った。切れぬ/事が/ある/か、何/で/も/切って/みせる/と/受け合った。そん/なら/君/の/指/を/切って/みろ/と/注文/した/から、何/だ/指/ぐらい/この/通り/だ/と/右/の/手/の/親指/の/甲/を/はす/に/切り込んだ。幸/ナイフ/が/小さい/の/と、親指/の/骨/が/堅かった/の/で、今だ/に/親指/は/手/に/付いて/いる。しかし/創痕/は/死ぬ/まで/消えぬ。

 ハイフンを付けるとすれば、「西洋-製」が当てはまります。
 ローマ字文では次のやうになります。

  • Shinrui no mono kara Seiyou-sei no Naifu wo moratte Kirei na ha wo hi ni kazashite, tomodachi ni misete itara, hitori ga hikaru koto wa hikaru ga kiresou mo nai to itta. Kirenu koto ga aru ka, nan de mo kitte miseru to ukeatta. Son nara kimi no yubi wo kitte miro to Chuumon shita kara, nan da yubi gurai kono toori da to migi no te no oyayubi no Kou wo hasu ni kirikonda. Saiwai Naifu ga chiisai no to, oyayubi no hone ga katakatta no de, imada ni oyayubi wa te ni tsuite iru. Shikasi kizuato wa shinu made kienu.