忌野清志郎

 棺桶からよみがへる場面がある。

 ちなみに先日の訃報までは「狂志郎」だと思ってゐた。

 さて、「よみがへる」は漢字で書くと「蘇る」または「甦る」であるが、これらは意味による表記で、語源をたどると、「よみ・がへる(黄泉・帰る)」だ。実際に「黄泉帰る」といふ表記例もある。ただ、黄泉といふのは熟字訓なので、単独の漢字で訓読み「よみ」にふさはしいものを探すとなると「やみ」との関連から「闇」になるらしい。これはさすがに使用例がないので、「よみがへる」を「闇帰る」と表記するのは無理がある。ところで、先ほど使用した「フサワシイ」は、語源が確定しないと「わ/は」の選択に悩むが、「ヨミガエル」もさうだが、語中の「ワイウエオ」はハ行由来が原則なので、語源を調査するのは、語中に「いうえお」「わゐゑを」が来る言葉のはうだ。例へば、「コトワル」は、意味的には「断る」と表記するが、語源的には「事割る」なので、語中でも「わ」を用ゐる。同様に「用ゐる」「率ゐる」も語源的表記では「持ち居る」「引き居る」だから、語中の「イ」は「ゐ」と表記する。

 ※(2009/05/08追記) 辞書を調べたところ、「用ゐる」「率ゐる」の「ゐる」は「率る(ゐる)」といふ古語に由来し、語源的には「持ち率る(もちゐる)」「引き率る(ひきゐる)」となる。