漢字伝来

 内容自体は良くまとめられてゐて良書だと思ふ。『漢字を真似て造られ、消えた文字たち』として、契丹文字西夏文字女真文字、字喃が挙げられてゐるが、そのうち契丹文字女真文字はまだ解読が進んでゐないさうだ。膨大な資料が暗号のまま横たはってゐる。ロマンがあるね。ただ、中国と朝鮮にとっては偽史がばれる危険性もあるので痛し痒しだ。
 また、『漢字をすてて造られた国字』の例としてパスパ文字とハングルが挙げられてゐる。ハングルは純粋に学問的に良く出来た文字だと思ふ。一方、パスパ文字の設計者、高僧パスパは文字設計のセンスがなかったらしい。パスパ文字モンゴル帝国の国字なのだが、余りにも非合理的に設計されたので、誰も読むことが出来ず、漢字やウイグル文字と併記するのが慣習になり、皮肉にも後世の学者によって解読できたらしい。