日本人の脳に主語はいらない - その2

 脳の状態を調べるMRIの解説については、突っ込みを入れるやうな専門知識は持ち合はせてゐない。例へば、虫の声を右脳で聞くか左脳で聞くかについては、少なくとも被験者については事実なのであらう。この道の専門家なら、サンプリング対象とか数とかで異論が出るのかもしれないが、私はこの点については何も言へない。
 一方、開音節言語と主語の省略傾向については、この書籍の資料だけでは、何の結論も出せないやうな気がする。もともと、主語や人称代名詞の省略は、言語の文法的性質が大きく影響してをり、助詞(前置詞、後置詞)が発達してゐる言語や、動詞の人称変化が発達してゐる言語では、主語がなくても、文意の解釈に揺らぎが少ないので、省略される傾向にある。例へば、助詞が発達してゐる言語として日本語が挙げられるし 動詞の人称変化が発達している言語としてはラテン語やイタリア語が挙げられる。
 このやうな言語的特徴について、この書籍は、専門用語が増え読者の理解の妨げになるので省略したと、前書きでコメントしてゐるが、自ら立証の機会を放棄してゐると共に、こちらの方面に言及すると、主語を省略する理由が、開音節による脳内処理よりも単純に文法的性質の方が因果関係が強かったので隠したと、勘繰られても仕方ない。