特集「(旧)ローマ字の分かち書き」: 導入

(2019/02/09)

 「分かち書きの理論」を始めようと思ひましたが、誰にでも分かるやうに簡潔な理論にすることは難しいやうです。私自身は、文法事項に基いて、一貫した分かち書きを行ってゐますが、文節、自立語、付属語などの概念が必要で、おそらく文法知識なくしては簡単に説明できないでせう。
 そこで、「分かち書きの実践」から始めます。著作権保護期限を過ぎた過去の名文をローマ字化しながら、分かち書きを説明していきたいと思ひます。対象著作は、夏目漱石の『坊ちゃん*1』です。文体と助動詞の使ひ方が、デアル体とデスマス対を双方含むので分かち書きで迷ふところをすべて引用できます。

 分かち書きの原則をまとめます。

  • (1) 原則として、辞書の見出し語は分かち書きの独立した単位とする
  • (2) ただし、接頭辞、接尾辞は分かち書きしない
  • (3) 活用語の見出し語以外の形に接続する助動詞、助詞は分離しない

 次に、ハイフンで区切る箇所をまとめます。

  • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする。
  • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分離する。
  • (3) 助動詞「ます」は主観的表現にも関わらずつづりが長くなるのでハイフンを前置する

 多少、解釈で迷ふ箇所はあると思ひますが、まづは、分かち書きの実践を開始します。