特集「訓令議事録」: 語末の促音

(2019/12/15)

5 学習上混乱を起こさないための注意
(中略)
(※一部抜粋)

現代かなづかい ローマ字
促音 あっと(叫ぶ) a' to (sakebu)
すうっと(消える) sû' to (kieru)

 訓令にはなりませんでしたが、議論上は、語末の促音は「'」で表はすといふ結論になってゐたやうです。語末といふのは相対的なものですから、漢字の音読みに出現する促音、動詞の活用語尾に現れる促音も語末と見なすと「'」を使ふ状況が増えます。実際、促音といふのは、擬音語・擬態語を除けば、ほとんどの場合、子音の省略なので、省略記号として「'」を使ふのは見当外れではありません。
 漢字熟語の場合、「いっ」を「ik, ip, is, it」と使ひ分けずに「i'」だけで表はせます。

一回 いっかい ikkai i'kai
一杯 いっぱい ippai i'pai
一歳 いっさい issai i'sai
一体 いったい ittai i'tai

 動詞の活用語尾の場合、語幹に表はせる子音を減らすことができます。「刈る」の語幹が「kar, kat」よりも「kar, ka'」の方が自然ですし、「買う」の語幹が「ka, kaw, kat」よりも、「ka, kaw, ka'」の方が自然です。更に、子音の前の「'」を促音、母音の前の「'」を黙字とすれば、「買う」の語幹が「ka', kaw」となります。

刈る karu karu 買う kau kau ka'u
刈らず karazu karazu 買わず kawazu kawazu kawazu
刈れば kareba kareba 買えば kaeba kaeba ka'eba
刈った katta ka'ta 買った katta ka'ta ka'ta

 母音の前の「'」を黙字と見なすといふ特性は応用が利きます。「位」といふ接尾辞はローマ字では「i」ですが、これを常に「'i」と書いてみます。

一位 いちい iti'i
二位 にい ni'i
三位 さんい san'i

 「'」を省くと、「itî」「nî」「sani」と区別が付かなくなります。「'」は、重要な機能を持ってゐるのに、記号なので常に省かれる危険があります。英字で表はすべきです。候補として一番ふさはしいのが「q」になります。今までの例を機械的「q」に置き換へたものと、最小限必要なものを掲げます。

一回 いっかい i'kai iqkai
一杯 いっぱい i'pai iqpai
一歳 いっさい i'sai iqsai
一体 いったい i'tai iqtai
刈る karu karu 買う ka'u kaqu kau
刈らず karazu karazu 買わず kawazu kawazu kawazu
刈れば kareba kareba 買えば ka'eba kaqeba kaeba
刈った ka'ta kaqta 買った ka'ta kaqta kaqta
一位 いちい itiqi itii
二位 にい niqi nii
三位 さんい sanqi sanqi

 最後に母音の前の促音はどうすべきが疑問が湧いてくると思ひます。母音の直前の「q」黙字なので、更にその前に促音の「q」を置きます。

  • 「うっあ」=「u」+「q(促音)」+「q(黙字)」+「a」=「uqqa」