特集「1947年草稿ローマ字文の書き方」: 単語

(2020/05/04)

Ⅱ 分ち書きのし方
1 原則として単語はそれぞれ一続きに書き、他の単語から離して書く。

 1947年草稿のローマ字分の書き方は、つづり方だけでなく分かち書きの記述も豊富です。分かち書きは訓令化されませんでしたが、資料価値は分かち書きの記述の法が高いでせう。さて、「単語」といふ用語が出てきました。実は日本語において単語の定義は非常に難しいのです、いや、どの言語でも同じです。英語は単語ごとに分かち書きされるから簡単ではないかと反論がくるかもしれませんが、単語と分かち書きは循環定義の関係にあり、「単語ごとに分かち書きする」
分かち書きするものが単語である」であり、何も定義されてゐません。
 単語といふのは、書き言葉が存在して、そして長い慣習で分かち書きが成立して、初めて社会的に共通認識としての単語が確立します。一方、日本語には分かち書きの習慣がありません。例へば英語の場合「He is a teacher.」を、学生が「Heisateacher.」と書けば減点されるでせうし、ホワイトカラーがそのやうな報告書を書けば、適性なしとして解雇されるでせう。一方、日本語の場合「私は生徒です。」で十分です。学生のときは、文法問題のときだけ単語分解ができればいいのです。社会人になってから単語なんて意識しません。唯一、辞書を引くときだけ見出し語として意識します。ところが、文法問題では「静かだ」が一語なのに、辞書の見出し語では「静か」になってゐます。そのことから、ローマ字でいふ単語とは辞書の見出し語を指してゐるものと思はれます。