北京五輪短觀

 場内、場外で、いろいろ盛り上がってゐる北京五輪だが、女子體操を見て、いろいろと思ふところがある。まづ、日本女子體操陣が團體で5位に入賞したさうだ。成績自體はすごいが、實際の演技を見ると、レベルが向上したやうには思へない。
 結局、日本のレベルが向上したのではなく、外國のレベルが低下したのが理由のやうだ。特に、レベル低下が著しいのは、元共産主義諸國だ。
 冷靜終了までのソ連はとにかく強かった。あらゆるスポーツで強かった。東ドイツルーマニアも強かった。これも共産主義におけるスポーツ至上主義のなせるわざだ。冷戰終了後ソ連崩潰により、共産主義のスポーツ至上主義も緩和されるかと思ったら、ソ連の元強豪達が、ウクライナベラルーシカザフスタンなど、ロシア周邊國の代表に散らばり、さまざま競技で上位を占めるやうになった。ますます、日本などの資本主義諸國が苦戰するやうになった。ところが、今回はその状況が完全に消えたやうだ。元共産主義諸國も、選手育成費は底を突き、共産主義時代の選手育成ノウハウも消え去ってしまったやうだ。
 シドニー五輪のころまでは舊共産圈諸國はすごかった。よく考へてみると舊共産圈諸國のスポーツ没落はアテネ五輪のころにはすでに始まってゐたのだらう。シドニー五輪までは、ロス五輪以來長らく、金メダルを5個以下しか取れなかった日本が、アテネ五輪で金メダル16個も獲得したのは、さういふ背景があったのかもしれない。
 北京五輪でも、日本の選手レベルがそれほど大きく向上したとは思へないのに、今回も現時點で既に金メダル5個を確保したやうだ。殘りの競技は嚴しいので、あと上澄みできても、せいぜい4個程度(柔道、ハンマー投げ、野球、女子レス)だらうが、それでも、シドニー以前よりは、日本チームは樂な戰ひをしてゐる。
 ところで、中國女子體操選手の年齡詐稱疑惑だが、中國ほどの政治力があれば、年齡詐稱よりも、採點操作のはうが樂ではないか?まさか、採點操作しても勝てないから、年齡詐稱疑惑の選手をだしたのか?
 しかし、採點操作なら10年後ばれても、時效みたいなもので、記録は消えないし、關係者も、「スポーツとスポンサーは不可分だ。あの採點はスポンサーの意嚮で仕方なかった」で納得するしかないだらう。實際、資本主義のスポーツ選手は谷町稼業だから、スポンサーの意嚮を無視して存在できない。
 ところが、年齡詐稱の選手は、死ぬまで年齡を僞らなければならない。本人にとっては大きな十字架だ。これは終身刑と同じだ。かういふ人權無視のことを行ってまで、國家の威信に拘る中國は、中世からまったく進歩してゐないやうだ。