金田一春彦先生の慧眼

 こちらのページで紹介されてゐる資料を見たところ、常用漢字といふ2000字程度の漢字集合に新たに200字を追加した程度では何も解決しないことが分かった。コンマ以下の使用頻度しかないものを取捨選択しようとすること自体が土台無理なのだ。さう言へば、もう、かれこれ30年ぐらゐ前のことだが、当時、漢字制限に積極的だった金田一先生が、ワープロが技術的に実現可能だと予測できてゐれば、漢字は5000字から6000字ぐらゐあっても良かったとコメントしてゐた。この数とはJISX0208の漢字数と妙に一致する。要するに、2000字の次に意味がある漢字集合は、JISX0208の6000字であり、この6000字を対象にした活用方法や教育方法を考へるはうが余程有意義である。確かに、一部、正字が欠けてゐるが、PCも携帯電話もこれがないと始まらない。活用できるものは活用すべきである。

 YAMAMOMO氏のブログ(*1)を読んでも分かるやうに、新常用漢字表は改正自体が目的化してゐて、改正に反対することもできない(*2)。ところが、政府でさへ、意見公募の期間に「飛翔体」などといふ専門用語で常用漢字表をないがしろにしてゐて、結局、誰も尊重しない。この一連の作業の中で、意味があるものを挙げるならば、暇な官僚の雇用対策ぐらゐだ。