ローマ字の「Ô」「ô」と「OO」が普及しない理由

(2018/08/05)

 訓令定義では、長音を表現するときは、「Ô」「ô」で表し、それが困難な場合は、大文字に限り、「OO」を認めるとあります。「Ô」「ô」が普及しない理由は割りと単純で、要するに入力が難しいこと、苦労して入力してもファイルに保存したり、メールで送ったりしたら、かなりの確率で文字化けを起こすことが原因でせう。
 HTMLの世界では、「Ô」「ô」で表示できるし、とりあへず、仮表示したものを、コピペで使ひ回せば、何とかなりますが、面倒であるのは確かです。他に「O^」「o^」とか代用表記も提案されてゐますが、いかにも格好悪いので、それなら、誤読の可能性が高くても「O」「o」で済ませたくなるものです。
 次に「OO」ですが、これは訓令定義でも認められてゐるので、引け目を感じずに、使へます。「oo」のやうな小文字の連続は認められてゐないといっても、その程度の違ひであれば、あまり、引け目を感じないでせう。しかし、「Toukyou」と書く人はゐても、「Tookyoo」と書く人は皆無ではないものの、かなり限られます。
 すばり「oo」と書くことは現代仮名遣ひの否定だからでせう。もともと、ローマ字運動は正仮名遣ひの否定も目的の一つです。正仮名遣ひには、「あう」「あふ」「えう」「えふ」「おう」「おふ」「おほ」「おを」と書いて「オー」と読む長音があります。現代仮名遣ひでは、二拍目が「う」「ふ」のものだけを「おう」に統一しました。二拍目が「ほ」「を」のものは「おお」にしました。これは、正仮名遣ひの慣例を無視できず、「う」「ふ」と書かれた仮名を「お」にすることに抵抗があったからです。一方、ローマ字はそれをさらに進めて全てを「おー」に統一しようといふことです。そこまでは受け入れられても、代用表記で「おお」にすることは、慣例無視で受け入れられるはずはありません。
 上記のやうな大きな流れを差し置いても、個々人のレベルでも、小学校一年生の作文で「おとおさんは、おうきい」と書いて減点され、苦労して「おお」と「おう」の使ひ分けを覚えたのに、今さらローマ字で「オトオサン ワ オオキイ」なんて幼稚な仮名遣ひはできないといふことなのでせう。ローマ字運動の主流派が「OU」という綴りを認めない限りローマ字が広まることはないでせうね。それなのに、翻字を採用した99式でさへ快く受け入れられない有様です。
 参考までに東京はメジャーな地名なので、「Tokyo」が圧倒してゐますが、東北の場合、グーグルで「Tôhoku」「Tōhoku」「Tohoku」「Touhoku」「Toohoku」を引用符付きで検索したところ、それぞれ、158件、209件、225件、240件、137件となり、「Touhoku」が僅差でトップ、「Toohoku」は最少数派となります。「OU」という綴りを認めれば「Touhoku」が圧倒的に主流になるでせうね。