特集「99式ローマ字」: 日本式派からの批判

(2018/08/19)

 99式は単音では日本式互換でありながら、長音の概念を廃止して翻字で対応するといふ方式でしたが、この方式に最も批判的に反応したのが実は日本式派でした。
 前回の記事で、「99式ローマ字はローマ字を大きく変革しようとしたものでなく」の部分は認識が甘く、古参のローマ字派にとって「ô」を「ou」とつづることが「ローマ字運動の根幹を否定する」ことだったのです。
 そもそも戦前の表音化運動は、正仮名遣ひの「あう」「あふ」「えう」「えふ」「おう」「おふ」「おほ」「おを」を「おー」に統一するのが目標でした。(厳密にいふと「えう」「えふ」は「よー」となりますが、オ段長音といふ意味では目標は同じです。)それを仮名文字で実現したのが、俗に言ふ棒引き仮名遣ひの「ー」で、ローマ字で実現したのが「ô」です。ところが、先んじて教育現場に導入した棒引き仮名遣ひが大不評で、数年で撤回され、その反省から、現代仮名遣ひでは採用されず、「あう」「あふ」「えう」「えふ」「おう」「おふ」を「おう」にし、「おほ」「おを」を「おお」にする妥協策が確定し、70年以上経過しました。もはや仮名遣ひではこれ以上の表音化はありえないでせう。表音化運動にとって、現代仮名遣ひは不本意であり、残されたのがローマ字だけになったのです。
 それを99式では現代仮名遣ひに迎合して、「ô」を「ou」にしようと提案したわけですから、本能的に反発されるはずです。このあたりはお互ひの溝が埋まるとは思へないので、実践といふ場で、双方コンテンツを充実させていくしかないでせうね。
 次回はヘボン式派が99式をどう受け止めたか見てみます。