パスポートは仮名文字の翻字に向かふのか?

(2018/09/08)

 まづ、このブログでは、パスポートで長音を省略することを批判してゐますが、それでも、非ヘボン式申請はリスクが伴ひますので、私自身は推奨しません。ただ、長音こそパスポート式ローマ字への最大の不満点であるのは確かです。

  • ヘボン式の歴史*1
    • 2000年4月: OH による長音表記を認める
    • 2008年2月: 非ヘボン式を認める。これにより OU, OO の長音表記が可能

 神奈川県のガイド*2を紹介します。

使用実績を示すつづりの確認ができる書類

申請にあたり、その氏名のつづりが実際に使用されていることを示す書類が必要です。ただし、初めてパスポートをつくる場合で、「おおの」「さとう」「ゆうこ」等の長音氏名(OO,OU,UU,OH)の「非ヘボン式ローマ字表記」を希望される方は必要ありません。

 長音の場合は使用実績は不要です。当たり前です。現代仮名遣ひといふ確固たる規範があるのに、それに使用実績を求めること自体がナンセンスです。

ヘボン式ローマ字表記の例

読みかた ヘボン式 ヘボン式
大野(おおの) ONO OONO / OHNO
佐藤(さとう) SATO SATOU / SATOH
優子(ゆうこ) YUKO YUUKO
島田(しまだ) SHIMADA SIMADA

 余談ですが、外務省はヘボン式*3を理解してゐません。正しくは「ŌNO, SATŌ, YŪKO」とつづるべきです。
 本題に戻りますが、非ヘボン式の例として、「SATOO」はありません。パスポートでは、訓令定義の代用表記よりも、「SATOU」といふ翻字が優勢といふことです。多分、「OONO」も「ŌNO」の代用表記ではなく、「おおの」の翻字なのでせう。また「OH」も「Ō」の代用表記でなく、「おー」の翻字です。「ー」を「H」に置き換へたものです。
 本筋とは関係ありませんが、「SIMADA」といふ訓令第1表で申請したい人は、長音ではないので、予めクレジットカード等で使用実績を作っておく必要があります。

 もちろん、パスポート式つづりには、他の不満点もありますが、長音を除けば、外国式氏名のつづりが大半です。それらは、パスポート式ローマ字の欠陥ではありません。結局、パスポート式ローマ字の最大の欠陥は長音の表記であり、その解決策として仮名文字の翻字に向かってゐるといふことです。