大和言葉の造語力

(2022/01/02) (正カナ)

 ローマ字文を書くとき最大の障害が同音異義語です。だから、日本語を表音文字で書き表すのは不可能だといふ反論がきます。私は日本語における漢字の音読みは、英語での頭字語(アクロニム)*1に当てはまると見なしてゐます。

  • JAL(ジャル):Japan Airline
  • 日航(にっかう):空←本の空を

 大和言葉を訓読みで漢字に結びつけ、その漢字の音読みを続けて、新しい漢字熟語(例、航空)を作り、さらに漢字熟語を並べたときは、それらの代表漢字を拾ひ上げることで新しい漢字熟語(例、日航)を作ります。これが明治期から昭和期に行はれた造語法の一つです。新しい概念に対して急速に単語を増やせる反面、急速に同音異義語も増えてきました。これに懲りたのか、日本人の漢字力が衰へたのか、平成期は外来語、特に英語を片仮名書き(例、ジャパンエアライン)にすることで単語を増やすやうになりました。どちらにしろ、明治以後は急速に増える新しい概念に対して、大和言葉で丁寧に新語を作るのでは間に合はず、漢字の音読みを組み合わせたり、英語の音を片仮名に写し取ることで間に合はせてきました。
 一方、大和言葉による造語法は忘れ去られつつありますが、唯一、動詞だけは造語力を保ち続けてゐます。例へば、「書く」と「表す」を組み合わせることで「書き表す」といふ新しい複合動詞が出来上がります。それを名詞にすることで「書表し」といふ大和言葉の名詞ができます。漢字熟語に同音異義語が多数あっても漢字で見分けるられるから問題ないと開き直るのでなく、大和言葉の新語を徐々に増やすことで同音異義語を減らしていく姿勢こそ豊かな日本語を作り上げることにつながります。
 私は下記のやうに心がけてゐます。

  • 動詞には極力大和言葉を使ふ。
  • 漢字熟語によるサ変複合動詞(例、使用する)は使はない。
  • 漢字一字によるサ変動詞(例、愛する、感ずる、信ずる、達する)は置き換へが難しいときは使ふ。