ローマ字と棒引き仮名遣ひの亡霊

(2018/08/11)

 ローマ字の最大の問題は長音の扱ひです。まづ、長音の定義が曖昧です。おそらく1937年訓令式*1の関係者は棒引き仮名遣ひ「おー」が念頭にあったと思はれます。その棒引き仮名遣ひは、仮名文字のレベルでは学校教育で1909年に否定されてゐます。
 そして、1946年に現代仮名遣ひで長音を「おう」とつづるといふ妥協策に決まり、それが定着したといふ状況です。だから、正式な「Ô(おー)」はともかく、「OO(おお)」と綴る代用表記はもはや受け入れられないでせう。それ以前にパスポートを受け付ける官庁側が何が長音であるのか本当に理解してゐるのか疑問です。「とおやま(遠山)」の「とお」は長音であり、「たかとお(高遠)」の「とお」は長音ではないといふ珍説*2も見つかりました。
 そして、正式な「Ô(おー)」ですが、文書作成の主流が鉛筆からキーボードに変はって30年以上経過してゐますが、入力環境は一向に整ひませんし、頑張って入力しても転送経路で文字化けになる可能性は依然として残ってゐます。ローマ字関係者が JIS キーボードに「Ô」を刻印するやうに依頼したとか、Shift-JIS で文字化けの危険性がない場所に符号化を依頼したとかあるのでせうか?残念ながら、JIS X 0213 の追加文字は、通常の Shift-JIS では使へません。
 とにかく、現実的に「Ô」は使へない、「OO」といふ代用表記も受け入れられない、公務員は長音の定義を理解してゐないといふ状況です。混乱を避けるには、現代仮名遣ひに従い「OU」とつづるのが確実です。これであれば、誰でも混乱なくつづれます。
 参考までに明示的に「オー」と長音表記する外来語は、訓令定義の代用表記に従ひ「OO」とつづります。